軽やかに揺れるのは
髪を伸ばすのが余り得意ではない。
平安の世なら大人気だったに違いない、硬くて毛量のある髪質の私。そんな私の髪はドライヤーを使ってもなかなかすぐに乾かない為に、いつも根負けして髪を切って短くしてしまう。
そんな私が珍しく髪を伸ばしていたのだが、そろそろパーマを当てようと、久しぶりに美容室に足を運んだ。
何年も通う美容室で、いつも同じ方に担当をしていただいている。髪型のオーダーもお任せすれば良いものに仕上げてくれる。
パーマを当てる間に、のんびりと雑誌を読んで過ごす。お砂糖は無しでミルクを入れた紅茶をいただく。美容室でのんびりと過ぎる時間は、ちょっとした息抜きになる。慣れない場所が苦手な私にとっては同じお店に通う習慣を持てたのは、幸福な事かもしれない。
他愛のない話を少しだけして、時々鏡を見ていれば、そこには新しい私がいる。
ちょっと頑張って伸ばした髪のおかげで、パーマは肩辺りでふんわりと波打っている。少しの我慢のおかげで素敵な髪になれるのだ。
そして髪を上手に切ってもらえた時は、何とは無しに心も軽やかになるものだ。
戸を開けると、真っ白が一面に広がる。
来年もよろしくお願いしますを言い、雪降る中に出て行く。
歩くたびに、毛先は軽やかに揺れる。赤いチェックの傘を広げて雪降る中を歩き出す。
今年ももうちょっと。
そう思いながら車に向かい歩いて行く。
冷たい外気と共に、整髪料の薫りがする。
ここまで髪を伸ばせたのは私にしては上出来だ。
この先どこまで伸ばせるかについてはまだ未定だが、もう少し伸ばしてみようと思う私であった。